あれは茹だるような暑さが続いていた八月の午後のことで私は庭の生垣を剪定しようとハサミを入れた瞬間、右手の甲に焼きごてを押し当てられたような衝撃的な痛みを感じ何が起きたのか理解するよりも先に視界の端で数匹の細長いハチが飛び交うのを見てアシナガバチに刺されたのだと直感しました。一目散に家の中に駆け込み水道の蛇口を全開にして冷たい水を患部に当て続けましたが痛みは引くどころか拍動に合わせてズキズキと増していき私は自分の不注意を激しく呪うとともに救急箱の中に何があるかを必死に思い出しました。幸いにも先日キャンプのために買い揃えていた強力な市販薬があることを思い出し私は震える手でポイズンリムーバーを患部に当てましたが黄色がかった透明な毒液が僅かに吸い出されるのを見て少しだけ冷静さを取り戻すことができたのです。私が手に取った薬は薬局の薬剤師さんに勧められた最強ランクのステロイド軟膏で、パッケージには蜂などの激しい腫れにという文字が力強く躍っていましたが、私はそれを患部を覆い隠すようにたっぷりと盛り付けその上から保冷剤をタオルで巻いて固定しました。刺されてから一時間が経過した頃、手の甲はグローブをはめたようにパンパンに腫れ上がり熱を持っていましたが、あの火がつくような激痛が次第に鈍い疼きへと変化していったのは明らかに高濃度のステロイド成分が私の皮膚の炎症スイッチを強制的にオフにしようと働いてくれていたおかげだと確信しています。その夜は腫れの範囲が手首まで広がりアレルギー症状が出ないか不安で眠れませんでしたが市販の抗ヒスタミン薬を服用して安静に努めた結果、翌朝には熱感が引き始め最悪の事態を脱することができました。蜂刺されは刺された瞬間の痛みもさることながら三日目あたりから襲ってくる狂おしいほどの痒みが本当の戦いであることを後に知りましたが、私は指示通りに薬を塗り続け、決して掻き壊さないという規律を守り抜いたことで、一週間後には跡形もなく完治させることができました。この実録を通じて私が伝えたいのは、蜂に刺されたらパニックになるのは当然ですが、その時に「何を塗るか」という正解をすでに手元に持っていることがどれほど精神的な支柱になるかということです。今でも庭に出る際はあの時の激痛を思い出して背筋が伸びますが、私の救急ポーチにはあの日私を救ってくれた軟膏が常に一等地に鎮座しており、それは私にとっての守護神のような存在となっています。自然の驚異は予期せぬ瞬間に訪れますが、科学の知恵を小さなチューブに詰めて備えておくことが、平和な日常を守り抜くための私の確かな武器となっているのです。